『這いよれ!ニャル子さん』ブースターの感想

TVアニメ2期目の参戦も決まって来月にはTDも出るので今更だけど、感想を書いてなかったので。

クー子とハス太君のキャラ単デッキが組めない件

まず、クー子とハス太君のキャラ単デッキが組めないのは無いわ。
これに不満を持っている人は多い。クー子やハス太君のキャラ単を組もうと思った人は購入を取り止めたんじゃないかな?
この作品の主人公である真尋さんを攻略するヒロインは3人いて、ニャル子さん・クー子・ハス太君な訳ですが、この内でキャラ単デッキを組めるのはニャル子さんだけ。商品として重大な欠陥と言わざるを得ないかと。
クー子やハス太君のキャラ単が組めないデザインって意図が解らない。
全45種類のカードプールで、ニャル子さんが33種類なのに対して、クー子が7種類、ハス太君が1種類である。ニャル子さん15種類、クー子15種類、ハス太君14種類で、この3人のキャラ単デッキが組める構成で良かったのではないか?
あー、クー子やハス太君のキャラ単が組めないと原作ファンのSAN値が下がって発狂するのが原典再現って意図なのか。SAN値が下がるわ。

キャラ混成デッキで実現できる原作再現も行われて無い

キャラ単デッキが組めなくても、キャラを混ぜてデッキを組めるならそれに応じた原作再現もあるかと思ったらら、そんな事も無かった。
原作ではニャル子さん・クー子・ハス太君は小学校時代からの幼馴染で、小学校時代に練習した3人1組で放つ合体技も存在します。Vスパーク上ではこの3人に真尋さんを加えて技属性《混沌》を軸にしてデッキを組む事が出来ますが、ニャル子さん・クー子・ハス太君の3人を並べると3人1組で放つ合体技「一にして全、全にして一なるトリプレットマキシマム」が打てるような原作再現も存在しません。
また、原作では、虚弱貧弱無知無能な地球人である真尋さんを、防御に戦力を割いてまで、事ある毎に宇宙的なトラブルの現場に引き出すのは、命中率と回避率にプラス100パーセントの補正がかかる支援効果があると言う設定が存在するのですが、Vスパーク上では、ベンチに真尋さんがいたらニャル子さん・クー子・ハス太君がパンプされるような原作再現は存在しません。
それどころか、原作の人間関係を考えると違和感のあるカードすら存在します。それはニャル子さんの万能PBが作品共通の技属性を参照してるのでクー子を守れる事。クー子メインのデッキを組もうとすると枚数が足りないのでニャル子さんのカードで作品共通の技属性を参照している基本パーツを入れざるを得ないのですが、クー子の万能PBが無くてニャル子さんの万能PBになるので、この様な違和感のある構成になってしまいます。

パートナーシステムに関する話

また、Vスパークには「パートナーシステム」と言う原作中の人間関係を再現する為のガジェットがあるんだけど、「クー子はニャル子さんの事を愛してるけど、ニャル子さんは種族的対立からクー子の愛を受け入れてない」とか「ニャル子さん・クー子・ハス太君は惑星保護機構の構成員として地球人の真尋さんを危ない目に遭わせる事はできずに守らないとならない一方、宇宙的なトラブルの現場でも真尋さんが一緒に居るとやる気が上がる」とか「ハス太君は真尋さんの事を好きで合体したいと思っている一方、ルーヒーにも好意を寄せている」とか、そう言う部分を全く再現していない。
クー子とハス太君のキャラ単デッキが組めなず、ニャル子さん以外のキャラは混成デッキになるようなデザインをしたのだから、人間関係の原作再現ぐらいは行うべきだったかと。

もっとも、1番最後の関係性はパートナーシステムでカード化できるが、前2つの関係性はパートナーシステムでもカード化できないけどね:-p
例えばニャル子さんのパートナーが真尋さんと言うデザインだったとしよう。
パートナーによる効果は下記の2つ。
・リングにいるカードは、ベンチのパートナーにサポートされるとパートナーアタックになる
真尋さんにサポートされてニャル子さんがパワーアップするのは原作通り
・リングにいるカードがダメージを受けた時、手札のパートナーを捨て札にする事でダメージを無効化する
真尋さんを犠牲にしてニャル子さんのダメージを軽減だと? 原作的には逆だろ?

そもそも、パートナーシステムはVスパークの前身である『サンデーVSマガジン』で少年漫画の原作再現を行うために作られたガジェットである。Vスパークでは、ギャルゲーやハーレムラノベの人間関係を再現するには適してないので、そう言う作品では、同じキャラの別のカード同士をパートナーとする運用となっている。
原理主義的なキャラ単デッキ否定派がパートナーシステムを根拠に「同一キャラがパートナーなのはおかしい」的なキャラ単デッキを行うが、パートナーシステムの実体は『僕は友達が少ない』の星奈と小鳩の関係性すらカード化できない代物である。ハーレム物のラノベやギャルゲーが参戦作品となり、1エキスパンション1作品の商品仕様で1キャラから大量のカードを作らないとならないのであれば、同一キャラがパートナーになるデザインは仕方ないのではないか?カードゲームとして成立させる為に原作的に関係ないキャラ同士をパートナーにされる事と比較すると、同一キャラ同士のパートナーは許容できるかと。

パロディ要素の原作再現

這いよれ!ニャル子さん』って作品は、原作にしてもアニメ版にしても、古今東西の様々な作品のパロディが盛り込まれている。多様なパロディが作品の魅力の1つとなっている。
これをTCG業界から見た場合、パロディ元となっている作品の内の幾つかはTCG化されている。だから、原作でなんらかのパロディであるシーンをカード化するのであれば、そのパロディ元がTCG化されているなら、カードの効果もパロディ元となったシーンやキャラがTCG化された際の効果のパロディになっているのが好ましい。
例えば『ジョジョの奇妙な冒険』のシュトロハイムの台詞をパロディしたシーンをカード化するのであれば、『ジョジョの奇妙な冒険』を題材としたTCGである『ジョジョの奇妙な冒険Adventure Battle Card』のシュトロハイムの効果とパロディにするとか。
だが、他社のTCGの効果をパロディにするのは難しいかもしれない。もしくは、同じブシロード社のTCGでも、ルールが違うTCGからパロディにするのも難しいかも知れない。
しかし、少なくともアニメ最終話の12話「夢見るままに待ちいたり」はAパート全体が『うる星やつら』のパロディで構成されていて、グタタンはうる星におけるラムの立ち位置にいた。そして、『うる星やつら』はVスパークの前身であるサンデーVSマガジンの参戦タイトルであった。
カード化されたグタタンに、サンマガのラムの効果のパロディになっているカードが存在しないのは残念である。
うる星やつら』がサンマガ参戦作品だった事は、Vスパークの前身がサンマガだった事による数少ないメリットの1つである。それを活かさないでどうするんだろうか? 今、現役のアニメ製作者に『うる星やつら』が与えた影響は大きく、よくパロディやオマージュの対象となっている。最近では、『えびてん』でも最終話の10話が『うる星やつら』のパロディ回であった。

構築の幅は広がったのか?

上にも書いたけど、全45種類のカードプールでニャル子さんが33種類。ニャル子さんのキャラ単を組むのであれば、構築の幅が広がったように見える。
けど、ユーザが求める構築の幅って、メタゲームに応じてキャンセルや除去等の基本パーツを増減したり、耐久力が高い方に寄せたりとかの調整の幅を出す事。
残念ながら、そう言う幅は出なかった。
ニャル子さんのカードプールの中で、キャンセルと万能PBは1種類ずつしか無かった。
これでは構築の幅が出てるとは言いがたい。
むしろ、キャンセルと万能PBは3種類のデッキタイプどれにも入るのに1種類しか収録されていないので、需要が集中して品薄・高騰が発生している。

技属性と称号

これは悪くなかった。
作品共通の技属性が《混沌》。実際に《混沌》なのなニャルラトホテプだけなのだが、作品共通の技属性って位置づけに文句を言っても仕方ない。他の作品で《混沌》が相応しいキャラが出て来た時にどうするか気になるけど。
ニャル子さんが《土》、クー子が《火》、ハス太君が《風》なのは、ダーレスの設定した四大元素の分類に基づいたもの。
ニャル子さんに《妹》とか《宇宙人》とか《黒》とか付いてなくて良かった。
ブシロードがちゃんと原典を研究した結果なのだろう。まぁ、遊宝洞みたいな電源不要ゲームのデザイン会社には、クトゥルフ物に詳しい人が何人も居ても不思議は無いから、そう言う人達が口を出した結果なのかも知れない。電源不要ゲームにはクトゥルフ物を題材とした名作ゲームが幾つかある。そう言う理由で、電源不要ゲームが好きな人にはクトゥルフ物に造詣の深い人が多い。そもそもSAN値ってネタも電源不要ゲームの物だし。

称号も、基本が元ネタとなった種族名で、ニャル子さんだけデッキが2系統組めるように、<ニャルラトホテプ>の他に<這いよる混沌>が用意されている。
将来的に他のクトゥルフ物がVスパークに参戦した際に、原典繋がりのデッキが組めるような配慮だと考えられる。もっとも、日本語の作品の場合、音訳が作品によって微妙に異なるのをどうするか気になるんだけど。Nyarlathotepだと<ニャルラトホテプ>と<ナイラーラトテップ>と<イアルラトホテップ>とか、Hasturだと<ハスター>と<ハストゥール>とか。

総括

このエキスパンションが出る直前のヴィクトリースパークは、メインヒロインとか人気あるキャラのキャラ単デッキが組めるカードプールを提供していた。つまり、原作のファンが組みたいと思うようなデッキが組めるTCGだった。だから個人的には『這いよれ!ニャル子さん』のブースターも同じようになると安心をしていた。
キャラ単デッキばかりデザイナーズデッキとして用意する事に対して、原作関係なくVスパークをTCGとしてプレイしてる層が「キャラ単デッキばかりがデザイナーズデッキと用意されていて、構築の幅が狭い。キャラ単デッキなんて組みたい奴が組める程度のデザインにしておけば良い。キャラ単デッキ縛りになるデザインをやめて、構築の幅の広いカードデザインにしろ」とか主張していた。
現状のキャラ単用のカードプールと言うのは、1キャラ当たり13種類〜15種類しか用意されていないから、確かに構築の幅は狭い(Vスパークは50枚のデッキを構築して1種類4枚までデッキに投入できる)。デッキ構築が「52枚から2枚を抜く作業」とか「60枚から10枚を抜く作業」とか揶揄されている。
多分、そう言う批判意見に対して、考えも無く配慮した結果なのだろう。
ニャル子さんのキャラ単は、称号<這いよる混沌>軸が19種類からデッキを構築できるカードプールだった。構築の幅は広がった。
その代わり、割を食ったのがクー子とハス太君だ。クー子は7枚だけ。これではキャラ単が組めない。ハス太君に至っては1枚しかカード化されていなかった。
キャラ単デッキが組めなくても、キャラを混ぜてデッキを組めるならそれに応じた原作再現もあるかと思ったらら、そんな事も無かった。
今回のエキスパンションを買って満足できるのは、キャラとしてのニャル子さんが好きな人か、特定のキャラに執着しない原作からの『這いよれ!ニャル子さん』の作品自体のファンだけだろう。例えば、アニメから入って、クー子やハス太君を気に入った人は満足できない。
ちなみに「原作関係なくVスパークをTCGとしてプレイしてる層」ってのは基本的にスパイクだから、デッキが強ければキャラ単でも買うし、構築の幅が広くてもデッキが弱ければ買わないよ、多分。
『シスターズプリンセス』『ベイビープリンセス』の原作再現性の悪さを批判していた俺からすれば、何で「キャラ単デッキと言うベターな解決策」を手放しのたのか理解できないよ。
構築の幅を増やすのは別に反対ではないが、キャラ単を組めなくしてまで行う必要は無かった。