「小さい政府型TCG」と「ベーシックインカム型TCG」

カードデザインの方向性の話。
あと、最初に断っておくけど、特定の政治的思想の優位性などを主張するものではありません。
つか、「ベーシックインカム」も「小さい政府」も、極端過ぎる思想だからこそ比喩として使い易いだけだからね。その辺を誤解しないでね。

ルールで毎ターン自動生成されるリソースの話

どんなTCGでも、ドローフェーズみたいなものがあって、毎ターン1〜2枚のカードが引ける。
また、土地とかエネルギーとか呼ばれる、タップしたり消耗したりレストしたりして何らかのリソースを生成する為のカードが元に戻って、またマナなり何なりを生成できる状態に戻る。
こう言う、ルールで自動生成されるリソースの量が、そのターンにカードの効果で新たに得るリソースに比して多いか少ないかで、カードデザインの方向性を分類する事ができる。
立っているだけでリソースが生成される(=ドローできる)カードが環境に多ければ、ルールで自動生成されるリソースの比率は少なくなり、逆にそう言うカードが環境の乏しければルールで自動生成されるリソースの比率は高くなる。

「小さい政府型TCG」とは?

ルールで自動生成されるリソースの比率が少ないTCGを「小さい政府型TCG」と規定する。
言い換えれば、立っているだけでリソースが生成されるカードが環境に大量に存在している事になる。
これに該当するのは、アクエリとLycee

アクエリはキーワード能力として「ドロー+x」「チャージx」ってのが存在している。コレは、そのキーサード能力持ちのカードが立っているだけで、毎ターンx枚のドローができるという物。チャージxの方は用途が限定されるけど、実質ドローと大差無い。
Lyceeは、キーワード能力としての規定は無いけど、立っているだけでドローできる特殊能力を持ったキャラは沢山いる。

「小さい政府型TCG」では、ルールで毎ターン自動生成されるリソースよりも、立っているだけでリソースが生成されるカードでのリソース獲得の方が重要となる。
また、実際の「小さい政府」な政策では貧富の差が拡大するのと同じように、最序盤に1枚目の立っているだけでリソースが生成されるカードを出せれば2枚目・3枚目を出しやすくなる一方、1枚目を出せなかったり除去られたりしたら2枚目・3枚目を出すのが難しくなりリソースの差が広がってそれだけで勝敗が決してしまう。

ベーシックインカムTCG」とは?

逆に、立っているだけでリソースが生成される(=ドローできる)カードが環境に乏しいTCGを「ベーシックインカムTCG」と規定する。
これに該当するのは、MTGとかD0とかヴァイスシュヴァルツとかヴィクトリースパーク。

どのTCGにも、毎ターンドローできる(手札を増やせる)カードは存在するけど、それって実は何らかのリソースを変換した結果ドローしている。そのカード自身のタップ・消耗・レストしたり、マナやエネルギーと言ったコストに相当する物を必要としたり。

ベーシックインカム政府型TCG」では、ルールで毎ターン自動生成されるリソースの有効活用が重要となる。

「小さい政府型TCG」と「ベーシックインカムTCG」の優劣

「小さい政府型TCG」はカードパワーのインフレが激しく、バランスも崩壊し易い傾向にあると言える。

近年のアクエリで壊れていたカードは軒並みエクストリームスタイルで禁止カードに指定されているが、それに該当するのは1F0Cのチャージブレイクだったり、2F2Cのチャージ2+αのブレイクだったりする。これは、立っているだけでリソースを生成するカードの代表格、コストパフォーマンスが優れ過ぎていたカード達であった。
Lyceeも、立っているだけでドローできるキャラが増えた辺りからおかしくなってきが気がする。

思えば、「ベーシックインカムTCG」の代表格であるMTGも、スタンダード環境が特定のデッキに染まり、後に禁止されるようなカードは、「小さい政府型TCG」の特徴となる立っているだけでリソースを生成するようなカードが多くを占める。《頭蓋骨絞め/Skullclamp》とか《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》とかね。

結論

立っているだけでリソースを有むカードは、デザインが難しいって事だろう。
カードパワーのインフレをさせ易いし、バランスを崩す原因になり易い。
そう言うカードを安易に出している「小さな政府型TCG」は長く遊びにくい傾向があり、意図して環境に出さないようにしている「ベーシックインカムTCG」は長く遊べる傾向にあると言える。
新しいTCGを始めようとする際は、そのTCGが「小さい政府型TCG」か「ベーシックインカムTCG」判断するような視点でカードプールや優勝者の使ったデッキを眺めてみると良いだろう。