方針転換の話

4/5のトレカショーで発表された、フォースセンチュリー以降の方針の話。

ユーザに対して一番インパクトが大きかったのは、賞金の出るイベントが大幅に削減された事だろう。サードまでは年1回の日本選手権・年3回のGP・年数回のオープンGPなどが開催されていたが、フォース以降は年2回の日本選手権だけになった。フォース以降の日本選手権は、賞金額で言うとサード以前のGP同程度である。つまり、年間の賞金総額で言うと1/3近い減額となった。
で、その数少なくなった賞金制大会を楽しむために、ショップトライアル(アクエリで言うところKoK、GWで言うところのGTみたいな形式)が導入された。

ショップトライアル形式は、他のTCGでも成功している形式だから、これの導入は良い。
考えないとならないのは、賞金が減額された理由である。

オフィシャルには、方針転換について、以下のように記述している。

これからの方針
2005年10月のスタートから「国内初の賞金制TCG」としてご愛顧頂いてきたディメンション・ゼロですが、今後はより多くの方に楽しんで頂くためによりプレイヤーの裾野を広げていく方針へと変更致します。従来のような賞金制を前面に押し出した展開を控え、より幅広い方に魅力を伝えられるような大会運営・商品展開・広報などを進めていきます。

今後の方針について、「プレイヤーの裾野を広げていく」とか「従来のような賞金制を前面に押し出した展開を控え」と書かれているが、賞金総額を減額する理由にはならない。
既存のユーザは賞金制に一番の魅力を感じてきたのだから、それを減額する事は既存ユーザを逃がす事になる。

賞金減額の理由については、未も蓋も無い言い方だが、売上が足りなかったのだと推測できる。

売上が足りていない傾向は、ファーストセンチュリーの頃から見受けられた。最初期は、アンコモン中心にデッキが組めた。そのようなレアリティ設定であった。
I-2『勝利への計略』などは、コモンアンコモンを中心にデッキを組めるからユーザに優しかったが、レアに魅力的なカードが乏しかった為、買う魅力の無いエキスパンションであった。当然、ユーザ数に対して売上が少なかったのだろう。

その後、ユーザの購入を煽る方向に方針転換する。
I-4では《ステルス・スナイパー》や《イビルアイ・ドライバー》などプランジャーがレアに設定された。この時、俺は『激戦をもたらす者』を10箱ぐらい買って開けた。
さらには、2デッキ制やシルバーレア、さらにサードセンチュリーではカートン1枚のシークレットレアまで採用された。

それでも、売上が足りずに、賞金総額が減額されたのだろう。

そう言う事情でイベントが減ったのだから、一部で囁かれているような「ショップトライアルやツアートライアルの通過者にはとラベルマネーが与えられる」と言う希望的観測は、まず実現しないだろう。
アクエリのKoKでは、ショップ代表に旅費が支給されたが、アクエリは賞金制では無い上、当時のアクエリは今のD0の3倍以上の売上があったはず。
また、MTGの日本選手権も各地区の予選の上位にトラベルマネーが支給されているが、こっちはもっと酷くて、予選の参加費が確か3000円ぐらいした。少なくとも俺が現役の頃には、こんなバカみたいな高い金額を払わされた。

閑話休題
D0のウリは賞金制TCGであるが、この点、一定の成功は収めたものの、年間2000万円台の賞金支給を支える程には、残念ながら成功しなかったと言える。
そこで、別の方向性を模索してユーザを獲得しようと言うのが方針転換の意図であるが、新規ユーザの獲得と言うのは、実はなかなか難しい。
Lyceeのような、特定の原作を複数持つTCGなら、タイトルが新規参戦する毎にユーザが増える。特に人気の高いタイトルを参戦させたら、大量のユーザを一気に獲得できる。TYPE-MOON参戦など非常にインパクトが強かった。
それに対し、特定の原作を持たない、オリジナル作品のTCGはユーザ獲得が難しい傾向が強い。
D0に先行する、オリジナル作品の国産TCGとして、アクエリアンエイジが挙げられる。俺はこのTCGを本職にしているから、原作無しのTCGがいかに新規ユーザを獲得しずらいか、骨身にしみている。毎年のように初心者講習会を開いたり、アニメ化したり、人気絵師を引っ張ってきたり、人気声優を使ったドラマCDを作ったりしたが、目に見えてユーザが増えた事は無かった。唯一、成功したと言えるのはアーケードゲーム化し、TCG版のパックにアーケード版のプロモを抱き合わせた時。確かに爆発的に人口が増えたが、地域差が激しい(と言うか、都市部のみ人口が増えて、地方は相変わらず増えない)上に、アーケード版プロモの抱き合わせが実質的にTCG版のパックの値上げとなってTCG版のプレーヤーには物凄く不評であった。
そう言う歴史を見てきてるので、方針転換をするのは良いが、目論見どおりにユーザが増えるかと言う点については疑問である。
見も蓋も無い事を言うと、今回打ち出した方針転換は、売上不足による賞金減額を誤魔化す為の方便かも知れない。

賞金制の大会が減った事で、オフシーズンが発生し、既存ユーザのモチベーションが低下する事が懸念される。しかし、オフシーズンにはユーザ主導でイベントを開こうと言う動きがある。
ターパンさんらが企画する『関東最強決定戦』である。
http://green.ap.teacup.com/tarpan/
ブロッコリーの方針転換に呼応して、こう言う動きがユーザから挙がって来ると言うのは、このTCGの良い所だと思う。