2chのWSスレで話題になっているデッキ操作の話

シャッフルの仕方として「クライマックスカードとそれ以外のカードを選り分け、クライマックス以外のカードを8山に分けるディールシャッフルを行い、クライマックスカードを8山それぞれの上に置く」と言うのはルール上、許されるのか? と言う疑問が呈されている。
この話に関する、現時点の俺の結論は「この話はTCGによって裁定が異なるから、ブシロードのフロアルール提示待ち」である。

少し昔話をする。
俺がMTGを遊んでいたのは主に1990年代の中頃、今から10年ぐらい前である。
MTGにはLandと呼ばれるカードがある。WSで言う所のクロック、D0やプロレヴォで言う所のエネルギーゾーンには、Landしか置けない、ってのがMTGのルールだと言えば、Landの重要性は解っていただけるだろうか。
Landは、60枚のデッキに20枚前後入れていた。
当時、Landが均等にバラけるよう「Landとそれ以外のカードを選り分け、[Land][Land以外][Land以外][Land][Land以外][Land以外]・・・と積み込んでからシャッフルすれば、Land事故が起き難くなる」と言う考えは、誰でも1度は考えたものである。しかし、それを他人に話すと「デッキ操作に当たる」と言われる。ルール違反だと認識されていたのだ。
また、《Survival of the Fittest》などデッキから特定のカードをサーチしてくるカードを使用した際、Landが固まっている箇所があったら、均等にバラけるように散らす操作をする(Landはサーチ対象のカードでない)事も考えられたが、やはり後で充分にシャッフルするとしても「デッキ操作に当たる」と言われ、ルール違反だと認識されていた。
昔話は以上で終わりだ。

割と誤解されるが、Landなりクライマックスカードなりが「均等にバラける」のと「良くシャッフルされている/充分に無作為化されている」は別物である。
「良くシャッフルされている/充分に無作為化されている」と言うのは、特定のカードが偏っている状況も一定確率で発生する。そう言う偏りの可能性を排除しているから、「均等にバラける」ように操作するのは積み込みと認識されている。

均等にバラけるように操作するのは積み込み、と言う認識は他の国産TCGでも共通認識とされていた。
アクエリだと、例えば「マクロシャッフル事件」と言うのがあった。
マクロシャッフルと言うのは、デッキリストを入力するとシャッフルされた並べ方のパターンを出力するプログラムを組み、そのパターン通りに並べてから別の手段でシャッフルする事で事故を回避する、と言うものだ。そのプログラムがExcelのマクロで組まれていたから、マクロシャッフルである。これもデッキを操作していると見なされて、積み込みと認識された。

ところで、2007年11月、プロレヴォの電撃15年祭で、上記の操作がTCGによってはイカサマと認識しない方が合理的である事を俺に示した事件が起きた。
要約すると、上記で説明してきたデッキの操作を、対戦前のシャッフル時に行っていたプレーヤーがおり、対戦相手がルール違反をしているとジャッジにアピールしたが、反則と取られなかったと言う話だ。ジャッジに訴えた対戦相手側のプレーヤーは、どうやらLyceeプレーヤーだった様子。
詳細は、当時の俺のblogを参照してもらいたい。
http://d.hatena.ne.jp/Nakaji_c/200711

MTGでは、意図はともかくデッキを並べ替えた後、充分にシャッフルされていれば、積み込みと見なさい。
以下はペナルティ・ガイドラインより引用
http://mjmj.info/data/JPN_PG_20080301_080312.html

134. フロアルール上の誤り ─ 不充分な無作為化
定義:
 プレイヤーが、過失によって自分のデッキを充分に無作為化できないままで対戦相手に提示した場合、この違反になる。デッキの中のカード1枚がどこにあるか、あるいはその分布がどうであるかをプレイヤーが知っているとジャッジが判断した場合、そのデッキは無作為化されていないとする。わざと充分に無作為化しなかったのであれば、〔イカサマ ─ ゲーム物品の不正操作〕の違反が適用される。

例:

(A) マジックのトーナメントで、ライブラリーからカードを探した後シャッフルしなかった。
(B) マジックのトーナメントで、ライブラリーからカードを探した後リフル・シャッフルを1回だけして対戦相手に渡した。


理念:
 プレイヤーは自分のデッキを必要に応じて充分に無作為化してあるはずである。特に競技RELやプロRELにおいては、そうする技術と必要性の理解があると考えられる。デッキに含まれているカードが見えた場合、シャッフルの途中に1枚2枚のカードの位置が判っただけであっても、無作為化がなされているとは考えない。シャッフル中にカードが自分にもチームメイトにも対戦相手にも見えないようにプレイヤーは気を払うことが期待される。

 プレイヤーは、シャッフルを始める前に自分のカードの順番を知っていると仮定され、充分な無作為化はその知識による有利を得ることができなくなるようにするためのものである。プレイヤーは複数の方法を用いて充分にデッキを無作為化すべきである。単にいくつかの山に並べるだけでは、充分な無作為化ではない。

 無作為化の前にカードを並べ替える(ある種のカードをデッキの中に散らしたり、逆に組み合わせて入れたりする)ことは認められるが、その後充分な無作為化が必要である。その後充分な無作為化がなされなければ、〔イカサマ ─ ゲーム物品の不正操作〕として扱われる。

どうやら、俺がMTGを離れている間に、ルールが変更されていたようだ。
俺は公認されるレベルジャッジではなかったが、MTGをやっていた頃は非公認の地方大会を何度も開催した経験があり、その運営のためにフロアルールには充分に目を通していたが、当時は、上記のような記載はなかったと記憶している。

シャッフル前に順番を操作しても、その後に充分なシャッフルを行えばルール違反としない合理性の説明として、サイドボード入れ替えの手順が挙げられる。
サイドボードの無いTCGプレーヤーの為に説明すると、サイドボードと言うのは、例えば3本勝負のような、同じ相手の1試合を複数回の対戦で行う形式の際、2戦目以降、相手のデッキに応じて自分のデッキを組み換える為に準備しておくカードの事である。1戦目でデッキの相性などは解っているのだから、同じデッキで残りの対戦を行っても勝敗が見えている場合も有る。そう言う事を考えると、サイドボートと言うのが対戦の面白みを増す為に考えられているルールである。例えばMTGでは、60枚のデッキに対して15枚のサイドボートを用意する事が認められている。
サイドボートと言うのは、その性質上、相手のデッキタイプや色に刺さるようなカードの場合が多い。
仮に8枚のカードをサイドボートから交換するとして、その8枚をどのようにデッキに混ぜればよいか?

○適当な間隔でデッキに差し込む。
→均等にバラけるように並べ替えたのと同等。
○8枚まとめてデッキの上に載せて、シャッフルする。
→例えばそのままディールシャッフルした場合、冒頭で述べた「8山に分けて、上に1枚ずつクライマックスカードを置く」と等価である。他のシャッフル方法でも、ほぼ同等。

上記の問題は、多かれ少なかれサイドボードの無いTCGでも発生する問題である。例えば、ゲームが終った段階の場と言うのは、大抵のTCGでは特定のカードが特定の箇所に固まっている。これをどのようにデッキに戻すかは、やはり、上記の「サイドボードをどのようにデッキに入れるか」問題になる。

単純に「デッキの中身を並べ替えたらルール違反」と言う取り決めを作ると、サイドボードがあるTCGでは多くの冤罪を生む事が推測できる。そう言う意味で、MTGのルールは合理的であると言える。
とは言え、アクエリ等のサイドボードの無い他のTCGで、MTGと同じように上記のルールを適用しようとしても、コンセンサスは得られないだろう。これらのTCGは、カードの効果以外で、大会中にデッキの中身を見る必然性が無い。特定のカードを均等にバラけさせる為、もしくは、多段ブレイクやコンバージョンキャラを固めて同時に引く為、デッキの中身を見て並び替えたとしたら、ルール違反を取るのが、公平性を維持する為に妥当な判断である。問題となるのは、本来なら無作為化されてるべきデッキの並びを、自分が有利になるように操作しようとした姿勢、そして、その目的の為に、本来なら見る必要の無いデッキの中身を見た事である。
多分、並び替えの後、他のTCGの基準で言う、充分なシャッフルを行えば、充分に無作為化されて並び替えた意味が無くなる。それでも、デッキの中身を操作しようとした姿勢は、ルール違反にされるであろう。

プロレヴォは、製作陣が同じと言う事でD0と同じフロアルールを適用されている。当然、フロアルールに記載の無い裁定についても、D0に準拠する。
D0は国産TCGとしては非常に競技性が高いTCGである事から、MTGに近いフロアルールが作られ、大きな大会のヘッドジャッジなどもMTGで実績の有る人間が採用されている。D0のこの方針は完全に正しい。アクエリでヘッドジャッジには散々辛酸を舐めさせられていた俺としては、D0初回の全国大会でMTGで実績が有人がヘッドジャッジをやっていた事に、どんだけ安心感を持った事か。
プロレヴォで、アクエリやLycee出身プレーヤーの認識に反して、MTGライクな裁定が出たのは、上記の理由である。

WSの話に戻る。
個人的要望を言わせて貰うと、サイドボードがあって大会中にデッキからカードに入れ替えを行うTCG以外は、デッキの中身を見て順番を操作したら、後から充分にシャッフルしたとしても積み込みのイカサマをしたと見なるルールにして欲しいかと。
サイドボードが無いなら、カードの効果でデッキからサーチしてくる時以外は、デッキの中身を見る必要が無い訳ですから。
そう言う精神的な姿勢が問題あると考える。
あと、操作してから充分にシャッフルすればOKって事になると、対戦前や対戦中に無駄な時間がかかるのも問題だと思う。これは、大会の運営時間を無駄に長引かせる結果となり、好ましくない。