版権物TCGのレギュレーション考察

版権物TCGに異なるメーカーの複数の原作か参戦しているのは、今では一般的となった。昔は、1つのTCGに参戦する原作は1つだけだったり、複数の原作が参戦していても版権元のメーカーは一緒だった。
まずは、複数の原作が参戦しているTCGに釣られるプレーヤーがどういうデッキを組みたいと考えるか考察する。次いで、各TCGのレギュレーション(構築時のルール)がユーザの要求にどう応えているかを考察してみる。

原作に釣られるユーザーが組みたいと考えるデッキ

■作品単
複数の原作が参戦しているTCGにも関わらず、特定の原作に拘ったデッキ。

■キャラ単
上記の作品単よりさらに縛りが強く、特定のキャラに拘って構築したデッキ。
デッキ内が全部「俺の嫁」なら、非常にテンションが上がる。

■好きな萌え属性で統一したデッキ
上記のキャラ単の派生系。
複数の原作から、自分の好きなキャラだけピックアップしてデッキに仕立てる。
結果的に、特定の萌え属性で統一されたデッキになると思われる。
例えば、ツンデレキャラばかりとか、クーデレキャラばかりとか、ツインテールばかりとか、ロリキャラばかりとか。

■声優で統一したデッキ
上記の萌え属性統一デッキのバリエーション違い。
キャラを演じている声優さんを統一したデッキ。

TCGのレギュレーションについて

版権物TCGのレギュレーションには、大きく分けて2種類ある。全てのカードプールからデッキが組めるスタンダード(ミックス)と、カードプールの中から特定の作品を選んでデッキを組むネオスタンダード(シングル)である。
■スタンダード(ミックス)
全てのカードプールからデッキが組めるレギュレーションである。
基本的にどのTCGもこのレギュレーションを持っている。が、後述するネオスタンダード(シングル)を持っているTCGはそちらの方が主軸になっている。
Lyceeやアクエリはネオスタンダード(シングル)を持っておらず、これが主軸である。

【メリット】
萌え属性統一デッキや声優統一デッキのような、複数の原作からキャラを選んだデッキも構築可能である。
・古い参戦作品でも、カードプールに残る限り、新規に発売される別の作品のカードを継ぎ足す事で、遊べる程度のデッキ性能を維持して遊び続ける事が可能。(ネオスタンダードだと、その作品の追加カードが来ないとデッキの性能を維持できない)

【デメリット】
・遊べる程度のデッキ性能を求めると、自分の知らない作品・好きじゃない作品からカードを入れないとならない。
・基本的に全ての発売エキスパンションを購入しないとならないので、資金的に厳しい。

■ネオスタンダード(シングル)
ヴァイスシュヴァルツやヴィクトリースパークでは主軸のレギュレーション。
プレシャスメモリーズも、今年8月にシングルと言う名で新設された。今後、シングルとミックスのどちらが主軸になるかは不明瞭だが、時代の趨勢から言ってシングルが主軸になると思われる。

【メリット】
・スタンダードではデッキ性能的に大きなビハインドの有る作品単で、存分に遊ぶ事が可能。
・自分の好きな作品だけでデッキ組んで、遊べる程度のデッキ性能を得ることができる。知らない作品や好きじゃない作品のカードを入れなくても遊べる。
・自分の好きな作品のカードだけ買えば遊べるので、次々とエキスパンションの出るTCGでも金銭的負担が少なくても遊べる。

【デメリット】
萌え属性統一デッキや声優統一デッキのような、複数の原作からキャラを選んだデッキを構築できない。
・定期的にエキスパンションの作られない作品で遊び続ける事ができない。

将来的に望まれるレギュレーションとか商品仕様とか

スタンダードしか無かった時代は、遊び続ける為に知らない作品のカードを買わないとなら無い点は不満の対象であった。
その不満を解消するネオスタンダードが提示されると、今度は定期的にエキスパンションの作られない作品で遊び続ける事ができない問題が不満の対象として挙がって来た。定期的にエキスパンションの作られないと、デッキを組み替えて遊ぶことができないし、商業的な理由からTCGはカードパワーがどんどん上がっていくものであるので、*1デッキ性能的に遊べなくなってしまう。
この両方を解決するには、スタンダードとネオスタンダードの中間的なレギュレーションが必要になってくると考える。
ネオスタンダードの「好きな作品を選んで使える」と言うメリットを活かしつつ、スタンダード時代には問題の無かった今更追加のエキスパンションを出しても売り上げが見込めないような作品のファンも楽しんでもらえる方策が必要なのである。
具体的には、作品2つを選んでデッキを構築するとかになる。
2つから選べるなら、1つ目を自分の本当に好きな作品にして、2つ目には、発売して日が浅くてカードパワーの高い作品の中から、自分の知っている作品を選べばよい。

■声優単に愛の手を・・・
声優は、キャラクターの構成要素して大きなウェイトを占めているのだが、TCGの中ではあまり重要視されない。
せいぜい、ファンデッキレベルの話として、声優単でデッキを組むことがある程度である。
それでも、声優単を組む人が多いと言うことは、TCGで声優の要素を楽しみたい人が多い証左である。
カードに記載する情報に声優を追加して、声優によるシナジーが発生するようなTCGをデザインしてもらいたいものである。

おまけ:萌え属性統一デッキが組み易くする為に必要な事

TCGは、全てのカードを無分別に組み合わせられる訳ではない。そんな事が可能になると、強いカードだけを集めたデッキの1強になってしまって、環境的に面白くない。
そうならないように、色の概念的なデッキ構築制約がある。例えば、赤いカードを使うには、他の赤いカードを手札から捨てるとか、場の特定の場所に赤いカードが置いてある必要があるとか。
また、TCGは、特定の条件を満たすカードを揃える事で、それぞれを単体で使った時以上の効果を発揮するようにデザインする事が可能だ。こう言うカード間の相乗効果をシナジーと言う。
この「デッキ構築制約」と「シナジー」を萌え属性を機軸に設定することで、ユーザが使いたいと考える萌え属性統一デッキを組み易い方向に誘導することができる。
Lyceeの場合
こういう方面の配慮が一番進んでいるのはLyceeである。流石は、エロゲー主体のTCGと言った所か。
「デッキ構築制約」として属性と言うものが設定されている。雪・月・宙・花・日の5種類である。TCGでこう言うデッキ構築制約には色を使うので、Lyceeの表現は珍しいのだが、これは宝塚歌劇団の組の名前に由来する。
で、この属性が、萌え属性に対応している。
クーデレだったら雪とか、ツンデレだったら日とか、ロリキャラでも元気いっぱいで快活なタイプだったら日とか。ロリキャラでもおしとやかなタイプだった花とか。

■アクエリの場合
「デッキ構築制約」として勢力と言うものが設定されている。色で表現されていてる。
キャラの性格付けで分類されるLyceeとは対象的に、キャラの立場とか服装で分類されいてる。
メイドさんなら白、巫女さんなら赤、シスターなら青、けもの耳とかエルフとか吸血鬼なら緑、天使なら黒とか。
これは、アクエリ本来のオリジナルストーリーに沿った分類である。

■WSの場合
「デッキ構築制約」として用意されている色は、上記のようは役割をしていない。同じ作品の同じキャラなのに、エキスパンションが違うと色が違う事は良くある。
その代わり、特徴によるシナジーで誘導している。
例えば、クーデレキャラは特徴《本》を持つとか。
1キャラに特徴が2つしかもてないシステムの上に、往々にして、内の1つは作品が同じ事によるシナジーに利用されている為、特徴によるシナジーを頼って、萌え属性統一デッキを組むのは難しいTCGである。

■プレメモの場合
WS同様、色がこの役割をしていなくて、特徴によるシナジーが作用している。
こちらでは特徴を4種類設定可能なので、WSよりも柔軟性が高い。

■Vスパークの場合
珍しく「デッキ構築制約」が無い。
その代わり、シナジーによってデッキ構築の幅を持たそうとしてる。
シナジーを構成する要素は、パートナーカードと技属性である。
残念な事に、Vスパークには、パートナーカードも技属性も原作に関係なく設定されてきた悲しい過去がある。
今は改善されつつあるが。
パートナーカードも、昔は原作的にあまり関係の無い別のキャラクターが独善的に設定されていて、好きなキャラをデッキに入れて有効活用するには、パートナーカードになっている好きでもなく原作的なつながりも無いキャラをデッキに入れないとならなかった。今出ているエキスパンションは、パートナーカードには同じキャラクターの別カードが割り振られるようになっている。
また、技属性も原作から散漫に拾ってきている観がある。同じ技属性を持っているカード同士はシナジーが形成されるのだが、複数の原作から同じ技属性のキャラ同士を集めてみた場合、そのキャラ達はファン同じデッキに入れて使いたいキャラの組み合わせなっていない。そう言う観点で技属性を設定していない。
最近でも『花咲くいろは』の緒花に与えられた《花》技とか、『僕は友達が少ない』の三日月夜空に与えられた《黒》技は、非難の対象とされた。既存参戦作品で同じ技属性を持つキャラを上げると、《花》技は『サクラ大戦』のアイリスやさくら(帝国華撃団花組メンバー)や『戦場のヴァルキュリア』のウェルキン・ギュンター、《黒》技は『サクラ大戦3』の花火や『みつどもえ』のひとはである。
この点は、版権物TCGとしては、改善の余地があるだろう。

*1:カードパワーのインフレ問題は、非版権物TCGで行われるスタンダード落ちでは解決できない問題である。例えばMTGでも、昔TheDeckやセラマゲドン等のフィニッシャーであった《セラの天使/Serra Angel》と、少し前にビートダウンからコントロールで広く使われた《悪斬の天使/Baneslayer Angel》比べれば、スタンダード落ちでインフレ問題が解決できない事が解る。