ユーザカンファレンス

中村氏が開口一番「会った人から『今日は帽子をかぶってないんですか』って指摘された」と語る。会場から多くの笑いが漏れた。中村氏は90年代後半、MtGのプロツアー等で海外の大会へ出た際、奇抜な帽子を被っていた為「HatMan」と呼ばれていた事は、その時期にMtGをプレイしていた人には有名な話である。

以下は、木谷会長と中村氏の発言の中で気になってメモした内容をピックアップ。

()で囲った部分は、私による補足・疑問・感想などである。

・(木谷会長の趣味丸出しと指摘される)格闘技とのタイアップは、イメージ戦略が半分、タイアップを取るためのタイアップなのが半分。
2chのスレで色々と叩かれているが、現状、出ているのは考えているプロモートの一部に過ぎない。非難してる2chネラーを見返す・後で後悔するようなプロモートを用意してる。
・D0のアピール先は「TCGが好きな層」「一般的なヲタク趣味層」「エンターテイメント全般が好きな層」「一般層」を考える。今は「TCGが好きな層」を中心にアピールしてるが、今後は他の層へのアピールも行う。
東スポGPという企画が進行中。4地域ぐらいから代表を選出し、『男祭り』(PRIDEの大晦日興行)に招待しそこで優勝者を決め、優勝者を東スポの特派員として選手へのインタビューを行ってもらう。

(アクエリで優勝するとチャンカーやラジオ収録で声優さんと会えるのと似たような物か?)

ヤングアニマルのでの漫画連載に関して。

ヤングアニマルは20万部(公称?実売?)出ている雑誌で、その90%がコンビニで売れている。ゲマ屋で扱っているヲタク向け漫画雑誌と比べて、一般層に対するアピールが強い。

・国内の市場規模

 MtGは最盛期、出荷ベースで70億、シングルや平行輸入等の周辺を含めると200億の売上があったが、今は出荷ベース10億、周辺を含めて25億。

WotCの企図したDM→MtGが成功しなかった理由について。

 DMに比べてMtGはシステムが古い(から、新しいシステムに慣れた人には馴染みにくい)。
車の年式に例えて説明していた。DMと比べてMtGは年式が古いくグレードダウンになるから乗り換えは起こりにくい、DMと比べてD0は年式が新しいくグレードアップになるから乗り換えは行いやすい。

・賞金総額2000万について、これは初年度の数字である。カードの売上が良ければ、当然、賞金も増額される。
・カードゲームカフェを作る(「カードの王様」に出てくるようなアレ)。

最初に出す場所は神保町と決めている(古本屋街であると同時に、書泉グランデなどがあって年季の入った卓上ゲーマー・ファンタジー系好きには馴染みの深い町である。が、そう言う話って名古屋を中心とした中部圏の人間にはピンと来ないだろう)。秋葉原でも良かったが、今マスコミが秋葉原を持ち上げすぎてるので、それでは露骨過ぎる、との事(秋葉原と神保町が非常に近いのだが、その点の説明を省いたのはどうなんだろうか?)。

・プロ制度を作らないと、賞金が出せない。弁護士と相談し、最終的には公正取引委員会とも相談した。
・プロ資格については13歳以上とする。プロ・アマが混在して大会に参加する件に関しては、今後、対応などを発表する。

プロの格闘家は、市井のジムに行って初心者を相手にガチで戦ったりしない。囲碁や将棋のプロの、碁会所とかで初心者相手にガチで戦ったりはしない。が、TCGでは強い人は大会とかで初心者相手にガチで戦う。スポーツマンシップならぬ『カードゲーマーシップ』を確立させる必要がある?

・ショップが開く大会に関しては、年齢制限とかは考えていない。
MtGのスタン落ちするサイクルに関して、中村さんは早いと考えている(3エキスパンションを1つのブロックという単位で数え、スタンでは常に2ブロックが存在する。1つのブロックの寿命は2年で、毎年1回、新しいブロックのエキスパンションが発売されると同時に、2年前のブロックが1つスタンから落ちる仕組み。1つのエキスパンションは1年4ヶ月から2年の間しか使えない。)
木谷会長の考えとしては、自分が遊ぶ視点で言うと、カードプールは少ないほうが良い。エキスパンション1つ当たりのカードセットも少ないほうが良く「エキスパンション1つで100枚は多い。70枚ぐらいに少なくならないか?」という要望を出している(スタンダード落ち・エキスパンションコンバートに積極的と言う意味か?)。
エラッタやQ&Aが無くて済むようなカードプール数をファーストセンチュリーで探っていきたい。
・(DMや遊戯王のような)漫画での展開が先行したカードデザインはしない。
・カードバランスとレアリティに関して。

 一義的には、壊れた強いカードはレアリティ関係なく出さない。
 二義的には、カードに当たり外れがあるのはTCGの醍醐味・本質の1つだと考える。ヘビーユーザは必要なレアが揃うまで作業的にパックを空けるが、そこに至らないライト名ユーザが持つパックを剥く楽しみは残したい。

・パックを空ける楽しみは残したい。コレクター向けに、ゲームではないトレーディングカードであるような凝った意匠のカードを作りたい。
木谷会長Lyceeもプレイできるように手を出したい(アクエリはシンプルスタイルのみプレイしていて、8月のBCCではユーザとの対戦イベントも行った)。LyceeもアクエリもD0もブロッコリーの作ったTCGであり、我が子みたいなものである。D0だけを贔屓せず、どの子も可愛がってやりたい、と考えている(言及の無かったROTCGとRaカワイソス)。
・オンラインゲーム化について。

 パソコンに入れてインターネット対戦のできるツール(Magic OnlineやAquarianAge Onlineみたいなもの)に関しては、やりたいと考えているが予定なし。チュートリアル的な物は早く作りたいとは考えている。やると決めたら、開発会社の開発ラインが空いていれば、開発期間8ヶ月、開発費用3000万で実現可能。
 ゲームセンターに設置するタイプのゲーム(QMA2アイドルマスターみたいなもの例示が不適切だったので訂正。アヴァロンの鍵三国志対戦みたいなもの)は、話がある。幾つかのメーカから打診があったそうだ。D0はそういうゲームにも向いていると考える。
いずれも、ユーザが増えれば実現する可能性が高くなる。

・レアリティに関して。コモン・アンコモン・レアの3段階。それ以上の細かい段階別けは行わない。
・カードデザインに関して。

 テストプレイを経て、メタの中心になるデッキタイプが3〜5になるように調整する。
 それでも1つのデッキが突出した壊れた環境になってしまったら、迅速に対応する。

・既に発表のあったグランプリや日本選手権以外にも、地域別のトーナメントやタイアップを取った企業名を関したトーナメントの開催も考えている。その中では、例えば「コモンとアンコモンだけの構築」等の変則ルールの採用も考えている。

 現状、大阪で14店舗の共同によるチャンピオンを選出する企画がある。また、テストプレイに参加した為にグランプリや日本選手権に出れない練馬の販売店の関係者を中心に、練馬でのチャンピオンを選出しようと言う企画もある。

・プロ登録の有効期限に関しては検討中。

2年ぐらいが妥当かという考えを木谷会長から示された(プロ登録するメリットって、予選抜けて本戦に出たときにしか発生しないのだから、これは的外れも甚だしい質問だと思った)。

・カードパワーのインフレが起こりえるか?

 『ドラゴンボール』を例に出し、強さがどんどん上がって行く事は基本的に感動を生み出すものであるが、限界効用が存在するものでもある。だから、カードパワーをインフレさせて行く事はしない。
 スタンダード落ちのシステムを採用するなら、環境を変えやすいから、「この環境で強いカード」と言うのを作りやすく、カードパワーを上げる必要が無くなる。
 スタンダード落ちを採用しないなら、昔のカードを買わなくても新規参入者が入ってこれるように、カードパワーを上げていって事実上のスタン落ちにするのも1つの方法。

・「D0を文化として考えているのか商材として考えているか?」と言う質問に対する中村氏の回答

「D0は文化にはならないが、TCGは文化になりえる」「TCGは10年続いているから、(一過性のブームではなく)文化に成りえる」
TCGが文化になるには、長く続くタイトルが必要で、D0は長く続くTCGにしたい。

・D0が成功して、仮に2000億の売上が出たとしたら、その1%の20億をショップの整備に回せば、TCGは文化になる。D0が成功したら、実行する。
TCGを作る要素の内、世界観とかは文系の才能が必要で、ゲームデザイン・カードデザインは理系の才能が必要。中村さんは両方の才能を持つ稀有な人、と木谷会長は評価してる(アクエリプレーヤーを中心に失笑が漏れたのは、世界観に対しては満足度が高いのに比して、カードデザインに対して満足度が低いからだろうか?)

質疑応答で自分が投げた質問と、その回答について。

○正社員に採用されている社会人は副業禁止規定があると思うが、プロ登録する事と兼ね合いはどうなろうだろうか?

 勤めている会社次第であるが、基本的に副業禁止規定はどの会社でも建前であり、本業に障らない程度なら問題ないものである。ブロッコリーではコゲどんぼさんが社員であるが、他の雑誌に連載を持っている件を例に出して説明が行われた。会社経営者の立場の視点で言えば、有給休暇がが多いか?ってのが本業に障っているかの判断基準になると木谷会長は語った。

○ジャッジ制度に関して。安心して競技できるよう、信頼を確保する制度を何か考えているのか? また、アクエリのようにユーザがイベントを開きたい時のサポートは何かあるのか?

 DPA内で組織化する。MtGみたいなレベルジャッジ制度を考えている。
 まずは、他のTCGに並ぶ信頼性を確保する(恐らく、アクエリのようなものではなくて、MtGを目標だと思う)。
 そして、ジャッジにも、やり甲斐があるような物を目指す。
 優勝賞金が300万の大会なら、ジャッジ担当者にはその3%、9万円ぐらいの報酬があっても良い。それぐらいのストレスがかかるものだと考える。
 ベスト8以上の対戦には、複数ジャッジ+カメラ撮影ぐらいの体制を敷きたい。
ユーザ主催の大会のサポートに関してはアクエリ行っていたことを踏襲する。

○大会の実施方式は、スイスドローか? シングルエルミか? アクエリみたいに1回負けたら終わりなのは面白くない。

 基本的にスイスドロー+上位8人のシングルエルミ。
 木谷会長の見解だと、これは1日で終わらせるのは無理だから、ベスト8以上の対戦は翌日にし、宿泊費も出す事を考えている。

以下は推測。

現状、広告は「ぎゃざ」にしか打っていないそうである。今、他のTCGをやっている層をプロ予備軍と位置付けその中からプロを作って行き、これとは別に、DM・遊戯王を経験してきた中高生を受け入れる何らかの受け皿を用意しているのでは無いか。

あと、受けた印象。

話の理解するのに、TCGに関するかなりの素養、特にMtGに関する知識が必要だった気がするが、今回、集まったのは主にアクエリのサークル対抗戦に集まった人。説明無しに「ジョン・フィンケル」とか言われて、わかった人が何人いるのか? 中村氏がどういうメタ環境でどんなデッキを使ったのか理解してる人が何人いるのか? ってのが気になった。中村氏が冒頭の挨拶で帽子話をしたのは、MtGの話が通じるか測る意図があったのかもしれない。それを考えると、多くの参加者が笑っていたからMtGの話がかなり通じると判断して話を進めたのは問題ないのかもしれない。
自分は格闘技関係や車関係に疎いから説明や比喩で判らない物があり、MtG関連の話題に関して同様ではないか?という点が気になった。。
また、中村氏がMtGのプロプレーヤーであり、大会運営に関してもある程度の裁量を認められているらしい事から、(アクエリの全国大会に大して感じるような)競技性に関する不安・不満は感じなくて済みそうである。コンフィデンスの後に中村氏が参加者と少し話をしていたので、その輪に加わって「フロアルール等も制定するんですよね?」って質問をしたが、当然のように作ると言う答えが返ってきた。

以下、毒吐き。

質疑応答で質問をした参加者の中に、2人ほど、言っていることが意味不明で、何を質問したのか分からない質問者が居た。ちょっとどうかと思った。木谷会長と中村氏は何と答えてよいか分からずに困惑していた。それでも、意図を汲み取って何とか回答していたが、その内容は質問者が聞きたかった内容だったのであろうか?
また、内1名は3月に開かれたアクエリのジャッジサミットの際に何度も質問をしていた人で、今回も2度目の質問の機会を求めていた。的外れな質問をしていないなら何回も質問しても良いかもしれないが、それでも最初から複数の質問があるのであったら、1回目の質問の機会に「質問したい点がX点あります」とか言って、1回にまとめればよいと思った。