ムービックの本気度を測るコラム

前回のTCGブームについて

このblogでも何度か触れている内容のおさらいである。
日本では90年代後半にTCGブームがあった。
MTGの日本上陸と遊戯王を起点としたブームであった。
このブームが終焉したのは、00年代前半。
終焉した主な理由は以下の2つ。
○遊び場を提供してくれるショップにユーザお金を落とさなかった結果、そう言うショップが潰れた
多くのユーザは、カードの購入を並行輸入業者・ネット通販・対戦スペースを持たない安売りショップ・量販店・ポイント還元等があるアニメグッズショップなどで買っていた。
そう言うユーザも、自分の生活圏に店を構えて対戦スペースを用意してるTCGショップを利用するが、その店では殆どカードを買わなかった。先に挙げた様な店で買った方が金銭的なアドが取れるから。
結果、対戦スペースを用意してるタイプのTCGショップは経営に行き詰まり、多くが潰れた。
店が潰れると、遊べる場が無くなって、TCGが衰退していった。

○売り逃げTCGの乱造
特に版権物で多かった。今でも単発の版権物では売り逃げの傾向が強い。
売り逃げTCGってのは、メーカー側がユーザに遊ぶ場を提供する気が無いTCGの事だ。
具体的に言えば、全国大会イベント・店舗大会イベントなどのサポートをする気が無い・1つ〜数個エキスパンション出したら終了などだ。
イベントを開く気が無いから、ルールの整備とか、フロアルール・トーナメントルールの類の整備も行わない。
こう言うTCGを掴まされたユーザは、少なくない投資をして遊べないTCGを掴んでしまったのだから、TCGに対する意欲が低下する。
また、ショップも「仕入れてみたら売り逃げTCGだった」なんて事があれば、売れずに不良在庫を抱える事になる。前述のユーザがお金を落とさない問題もあって、経営に負担がかかり、店が潰れる要因となる。
・売り逃げTCGが乱造された理由について
幾つかのメーカーがTCG市場を育てる努力をした結果、90年代末から00年代初頭にかけて、TCG市場は大きく膨れ上がった。
そこに後から参入して市場を育てる努力をせずに利益だけ得ようと言うハゲタカやハイエナのようなメーカーが参入した為、売り逃げTCGが乱造される結果となった。
代表的な売り逃げTCGメーカーと言うとアマダだろう。
また、コナミバンダイも、長くサポートを続けるTCGを出している一方で、多くの売り逃げTCGを出していた。これらのメーカーのスタンスは、とりあえずTCGを出してみて、売れた物だけサポートするって物であった。
上記のような理由で乱造された売り逃げTCGが、日本のTCG市場版のアタリショックを招いたとも言える。

今のTCG業界と、ムービック参入時に抱いた感想。

今のTCG業界も、90年代末から00年代初頭と同規模のTCGブームになっていると判断している。
男児向けTCG市場をデュエルマスターズが支え、大人向けTCGの市場をLyceeが支えて、ブームを形成した。
MTGもゼンディカーのトレジャーカード収録やコレに前後した『下の環境』整備やEDHの導入により過去のTCGブームの際にMTGに触れていた人間の復帰を促した。
ここで触れたTCGを出したメーカーやプロデューサの努力によってTCG市場が再度育てられて、前回と同規模、この先の流れによっては前回を越えるTCGブームが今、発生している。

ムービック参入
去年の始め頃に、『けいおん!』と言う化け物じみた人気の版権を引っさげて、ムービックがエンスカイと手を組んでTCG市場に参入した。
当時は、上記で説明したような「TCG市場に魅力を見出して、市場を育てる気は無いけど、利益だけ得たいハゲタカ・ハイエナの類」ではないかと警戒していた。
http://d.hatena.ne.jp/Nakaji_c/20100404#p3
TCG市場を盛り上げた他のメーカーと同様に、ムービックTCG市場を盛り上げる投資をして、そこから利益を引き出すなら文句は無かったのだけどね。
その後の経過については、あえて触れない。

ムービックの本気

やはり『けいおん!』と言う版権が強かったのか、ムービックは翻意してTCG市場を育ててる側の企業に回ったように思える発表を行った。
http://www.p-memories.com/pc/event/regulation.html
・作品単でデッキが組めるシングルレギュレーションの制定
新規参入がし易いシステム。
・店舗予選→地区決勝→全国決勝と言う流れの全国大会開催
しかも、地区決勝が11地区。また、地区決勝の優勝者は交通費・滞在費をムービックの負担で全国大会に参加できる。
・フロアルールの制定

○この発表をどう読むか?
希望的観測として、ムービックTCG市場に参入して1年が経って「TCG市場を盛り上げる事が自社の利益に繋がる」と判断したと考えたい。
元々ムービックは、3年かけて『魔法少女まどか☆マギカ』を企画するなど、市場に根を下ろした戦略も取れるメーカーなのだから。
だから、他のメーカーの手法を学習して、不十分ながらもプレメモでフロアルールを制定して、全国大会を企画したと。
ならば、もう1つ、他のメーカーに習って欲しい事がある。
それは、大会を開いてくれる販売店インセンティブを与える事である。
公認大会を申請したショップの大会キットを送るのは基本だが、それ以外にも何らかのインセンティブを与えて欲しい。
モラルの高いユーザーならば、大会を開いてくれるショップが貴重なのは解っているので、カードを買う場合には大会を開いてくれる店で買う。だが、そう言うモラルの高いユーザーだけで大会を開いてくれるショップを支えられるかと言うと、無理である事は前のTCGブームの際に証明されてしまった。
それで考案された、メーカー側ができる打開策が、大会を開くショップに限ってインセンティブを与える方法だ。
行っているメーカーは少ないが。
例えばブシロードなら、年2回、自由に使えるプロモパックを提供している。

結び

ムービックの本格化によって、ユーザーもショップも恩恵を受け、日本のTCG市場がさらに盛り上げる事を期待したい。
特に、ムービックの持っているアニメ開発能力とか、抱えているアニメの版権とかには大いに期待してる。この先『魔法少女まどか☆マギカ』みたいな良作がまた飛び出してくるかもしれないし。個人的に『こどものじかん』とか『ローゼンメイデン』シリーズとかTCG化して欲しいし。